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本誌編集長◉沖藤 武彦
掲載号: 2012年9月1日号
泳がせはワンチャンスをモノに!
青いレンズの向こうに暗闇を覗き込むような、透明だけど果てしなく重い青。クロシオブルーとでも呼びたくなる海。
風もないのに三本岳の周りは潮がぶつかり合って白波を立てている。その中を、海楽丸はムロアジの反応を探して進む。
7月25日。それまでの24度台の低水温から一転、28度の潮が差してきた。
6時に出船したこの日は三宅島出身の加藤さんと宮澤さんにご一緒させていただいた。
加藤さんは泳がせでモロコをメインに、宮澤さんはジギングでカンパチを狙う。聞いて驚いたのだが、2人とも三本岳で釣りをするのは初めてだそうだ。
水深40メートルで加藤さんがエサのムロアジ釣りを始めると同時に、ジグを落としてシャクった宮澤さんに1.5キロのヒレナガカンパチがヒットする。
流し変えると今度は2キロ級。ムロ釣りに苦戦する加藤さんを尻目に三本岳のジギングを満喫している。
8時過ぎ、仲乗りの田中さんがムロを補充し、三本岳の西側へ移動して泳がせも本格開始。
水深70メートルから30メートルへと、三本岳に向かって2ノットで一気に流れていく。
「これは食いそうですよ」
物腰軟らかく寡黙な倉持船長が言う。一昨年、このポイントで私がヒラマサを釣ったときも、昨年、田中さんがモロコを釣ったときも、この潮だったそうだ。
「スッポ抜けた!」
流し変えのとき、加藤さんが悔しそうに言う。アタリの感じからモロコと思われたそうだ。
その2流し後、今度はスッポ抜けることなく竿先が海面に向かって突っ込んだ。
激しく竿がたたかれ、ときに絞り込まれるが、モロコを想定した加藤さんのタックルは楽らく主導権を握り、魚を浮かせる。
「いやあ、うれしいなあ!」
モロコではなかったが、憧れの三本岳で4キロのカンパチを掲げて笑う加藤さん。
続く流しでは宮澤さんが3本目となる3キロのカンパチとのファイトを楽しみ、大満足の笑顔でツーショット&握手。昼前に沖揚がりとなった。
実は加藤さんはいわゆるUターンで故郷.三宅島に帰って仕事を始める直前だったそうだ。美しい海と温かい友人、そしてカンパチが、彼の帰郷を祝ってくれた一日だった。
[海友丸]倉持昌康船長とスタッフがみなさんをもてなしてくれます
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