「うーん、あとちょっとで本格化するはず。取材はもう少し後のほうがいいと思うけど……」
　新徳丸の吉田慎市船長は、そう正直にアドバイスしてくれた。けれども早めに取材して、タイムリーな記事を紹介するのが本誌の宿命。
　そうして強引に押し切って出かけたのが10月13日のこと。それでも内心は、
　「ひょっとすると最初の秋ダイ爆釣日に当たったりして」と野心が渦巻くわけである。
　7名が乗り込んで向かったのはワラサ狙いの船が集結する吉野瀬。実のところ当日は、前半ワラサ、後半マダイというスタイルで出船したのだ。
　ハリスは8号6メートル、タナは海面から40メートル。一時期のワラサフィーバーに比べるとアタリは遠いものの、右舷ミヨシから竿を出す私にもドカンと4キロ級がヒット。
　おまけに左舷大ドモの山下さんのワラサ仕掛けに1キロ級のマダイが食い付いて、早くも本命の画撮りも完了してしまった。
　こうして幸先よくスタートを切り、後半のマダイ狙いへと突入。船を流したポイントはブロックと呼ぶ人工魚礁や、剣崎沖のあちこちに点在する天然の根周り。水深は40〜50 メートルといったところで、指示ダナは底からハリス分＋1メートルだ。
　しかしアツイのは鼻息だけで、マダイの食いは船長の言葉どおりだった。
　イナダやサバ、ソウダガツオはポツポツと食い付くものの、本命のアタリは遠い。上潮も速く、底ダチを手早く取り直さないと釣りにくい状況だった。
　結果、マダイを食わせたのは釣り座が潮先の山下さんだけ。1.6キロと小ダイを追加し、ワラサ場で釣った1枚を合わせて計3枚。ちなみに1.6キロは、タナの5メートル上から2メートルずつ付けエサを落として食わせたという。