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本誌編集部◎尾川泰将
掲載号: 2011年4月15日号
根魚専門は継承
本誌が取材を再開した3月20日、私が向かったのは地元藤沢市の湘南片瀬港である。
心強い相棒として同行してくれたのは、同じ藤沢在住の金井恵美さん。こうしたご時世、ホームグラウンドの海へ、気心知れた地元の釣り仲間と出かけると心底ホッとする。
訪れた船宿は年明けから気にかけていた、まなぶ丸。聞き慣れない釣り人には旧名.片瀬丸といえばピンとくるだろう。
片瀬丸は周年「根魚乗合」を看板に掲げる船宿として、古くから異色の存在だった。関東一円を見わたしてみても、オニカサゴやアラなどを一年中狙い続ける乗合船を私は知らない。
その片瀬丸が長い歴史に幕を下ろしたのが昨年末。慣れ親しんだ釣り人にとっては寂しい話だが、根魚一筋のDNAは、同宿で長年舵をとってきた三ケ部学(みかべまなぶ)船長がしっかり受け継いだ。
耳目に新しい「まなぶ丸」とは、片瀬丸からバトンを手渡された三ケ部船長が今年1月に独立開業した船宿なのだ。船名に自分の名を付けたのは、心機一転、全責任を自分が背負う決意表明だろう。
とはいえ受付も同じ場所だし、7時20分出船という小田急線.片瀬江ノ島駅の到着時刻に合わせた絶妙な出船時間も従来のまま。いつものとおり出かけて、片瀬丸があった所に「まなぶ丸」を見つければいい。
この日、まなぶ丸は6名を乗せて江ノ島沖へ走った。大震災後の久びさの海、まずは仕切り直しのつもりで江ノ島神社に拝礼。とにかく早く、平凡な日常が戻ってきてほしい。
「さあ始めましょうか。たぶん、大丈夫!」と船長の合図。
「え? たぶんって、どういう意味?」と聞くと、魚探とGPSの電源が入らないという。
えーっ! て感じのトラブルだが、こちらの心配をよそに船長はあわてるでもなく、いつもどおりの人なつっこい笑顔のままだった。
仕掛けが着底した人に、
「ここの水深、84メートルくらいでしょ?」と聞いては、大きくうなずいている。てことは、昔ながらの山ダテ航法でポイントに着けてしまったわけだ。さすがは百戦錬磨、心配ご無用。
アタリも1流し目で到来し、右舷トモの西本さんが35センチ級のオニカサゴ(標準和名イズカサゴ)をバケツに放り込んでいる。
左舷ミヨシで竿を出している我われも、船宿のサバエサ、そして持参したサーモンの切り身エサを交互に付けたりしてオニカサゴにアピール。
ちなみに金井さんの釣り方はセオリーどおり。オモリを底から50センチほど切った位置からゆっくりと誘い上げてはフワリと落とし込み、タナぼけしないよう時どき底ダチを取り直している。
一方、私は小づき釣法。オモリで10回ほど海底をノックしてから、ハリス長分ゆっくりと聞き上げる。
この小づきを延々と繰り返し、オニカサゴを強引に振り向かせて食い付かせるわけだが、難点は釣り手が疲れてしまうこと。とくに150号以上のオモリを使う釣り場では、沖揚がり後、背筋がコリコリになってしまう。
その点、まなぶ丸はまだ楽。旧.片瀬丸のころから、他地区よりも軽い100号オモリが基準だからである。
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