Check
本誌編集長/沖藤武彦
掲載号: 2012年6月1日号
本命が連続するものの
例年5月中旬は大ダイが釣れる南伊豆
コマセの振り方も考えながら
青野川の河口を出て西に進むと、船に並んで海面を舐めるように飛んでいたミズナギドリが彼方に大きな鳥山を作り始めた。時折ギラリと腹を見せるのはカツオかサバか。米丸.肥田定佳(さだよし)船長の見たてはサバであった。
石廊崎に向かって手を合わせ、大ダイ&爆釣祈願するのは日本四輪レース界の重鎮.坂東正明さん。
石廊崎をすぎ、中木沖で6時の開始時刻になる。
「はいやって。ちょっと深いよ、75メートル」
周年マダイを狙う米丸は当地で最もマダイ釣りに明るい。船長は実に気さくだが、釣りに関する指示はシンプルだ。
この場合の「75メートル」は、海面からコマセカゴまでの深さをさす。
船長は魚探と潮の流れ方やエサ取りの様子を見て、指示ダナをそのつど変えていく。だから、米丸ではあらかじめハリスの長さを決めておかないと好釣果は期待できない。
そのハリスの長さは10メートル。太さは4号。
大ダイを想定して、また、食いがいいマダイを浮かせて釣ることから、船長はそれ以上細いハリスをすすめない。
激戦区のマダイ釣り場ならまだしも、ここは南伊豆。4号で食わないのなら、船長はマダイが食ってきそうなポイントを、それこそ時間いっぱい探ってくれる。
だから、釣り人は一期一会の大ダイに思いを馳せて、4号で待つべきなのだ。
4月29日、この日、米丸で竿を出すのは私を入れて計7人。日が高くなるとともに眼前の山並みの緑は鮮やかに、海は青く澄み、鳥山は派手になった。ん?
なぜ鳥山なのか。この正体はカタクチイワシで、例年初夏を前に回遊してくるのだという。
「イワシにマダイが着いちゃうんだよなあ」
船長が心配そうに言う。
「引っ張りでカツオ釣ろうぜ」
坂東さんが本気で言う。
アタリなく船は西進する。三ツ石岬の沖、指示ダナ58メートル、48メートルと、徐々に浅い場所を探っていく。
「お、食ったね」
船長がマイクで言うと同時に右ミヨシのお客さんがヤリトリを始める。
「大きくないですよ」と謙そんしつつ、慣れた手つきで取り込んだのは1キロ弱の本命。
南伊豆の乗っ込みマダイというと、石廊崎周辺の深場を連想する人もいるかもしれないが、水深40〜60メートル、指示ダナ30〜40メートルのポイントも主軸になる。
「はいどうぞ、40メートル」
船中1枚目の次の流しではさらに浅い場所を狙う。
左舷で、右舷で竿がクククンとおじぎして、イサキが上がる。
「これから夏はイサキも釣れる場所でマダイが食ってくることが増えるよね」と船長。
どれもプロポーションのいい良型イサキだと感心していると、あれ?
赤い魚が上がっている。
それは右胴の間で自作の和竿を使い、仕掛けもたくさん持参し、マイペースでのんびり楽しんでおられる方だった。
これなら、マダイはもっと食ってくるんじゃないか?
そう思わせる展開である。
しかし、その後、マダイのアタリはなかなかこない。再び指示ダナ58メートルと深めも探るが好転しない。
「ビシが冷たいもの、きっと、底潮が冷たいんだよ」
坂東さんが言う。後日談だが、ダイバーの方の話で、それは確かなようだった。
Page1 本命が連続するものの
Page2 本命ポイントも一服?
※本誌紙面では、カラーグラビア、仕掛図などがご覧いただけます。