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本誌APC(神奈川)/ 平林 潔
掲載号: 2011年11月15日号
秋晴れに映える和竿の弧
写真は邦一さん。当日は江戸和竿の親方たちが集まった
ハゼの元気な引きに顔もほころぶ竿忠さん
そうか、もう19回になるんだ……と我ながら驚いたのが江戸和竿協同組合主催の「研修ハゼ釣り会」だ。
僕はそのほとんどに出席しているから、いいかげんハゼ釣り名人になっていてもいいのだが、そこは甘くない。
ハゼ釣りの世界はハゼ研に代表されるように、シーズンになるとハゼ一筋というベテランたちがわんさといる。
遊びの延長でチョイとハゼ釣りでも……といった世界とは全く違う、釣り人生の完成形とも言えるようなすごい世界がそこにある。
腕の上達は別にしても、これだけ長いこと中通しの和竿に親しんでいると、その魅力に惚ほれる一方でハゼが掛かってキレイな弧を描く愛竿が愛いとおしくてたまらなくなる。
2ミリあるかないかの細い布袋(ほてい)竹の穂先の中を通った糸が小さなハゼのアタリを感知すると、穂先はアタリを増幅して絶妙に反応する。
こんな芸術的とも言える釣りの世界が江戸時代から続いており、それが江戸和竿師の親方たちに継承されて国の伝統工芸指定となっている。
日本の釣り文化というのは本当にすごい。職漁の対極にある遊びの釣りの極致だ。
10月4日は天候にも恵まれ、7時半には江戸和竿師の親方たちが深川の吉野屋に集合した。
8時に両舷ズラリの満員状態で出船した船は運河を抜けて東京湾に出ると、木更津へと走っていく。
9時近くには木更津沖堤の内側に入り、いよいよ釣りがスタートした。
ハゼ竿は釣り場に着いてから継ぐ。竿師の親方たちだから当然のこと年代物の銘竿を何本も用意して船に乗っているのだが、一般的に使いやすい竿は9尺(2.7メートル)の2本セットだ。親方たちが用意した竿もそれが主流。
竿忠(さおちゅう)師匠は四代目を襲名する前の修行時代に作った「竹の子」という焼印が入った古い竿を用意していたが、これは貴重な竿である。
ちなみに9尺の竿は3本継ぎが一般的だが、継ぐときには穂先から順に継ぐのが基本。逆に抜くときには手元から抜くわけだ。
釣り場の水深は2〜3メートル。開始するや否や、両舷にズラリと並んだ和竿が次つぎと大きな弧を描く。
ハゼは10センチ程度の小ぶりが目立ったが、それでも竿の曲がりは見事。
小さなハゼでも大きな魚を掛けたような釣趣が楽しめるのも中通しハゼ竿の魅力だ。
時どき15センチくらいの良型が掛かるが、そうなると竿の曲がりも一段と素晴らしくなる。
見ているだけで楽しい風情のある光景だが、やはり僕も釣り人だ。竿を手にしたくてウズウズしてしまうが、11時くらいまでは撮影に精を出さなくちゃ!
少し移動して水深4〜5メートルという深いポイントを流したが、ほとんどアタリがないようだ。
例年ならそのあたりの水深で良型のハゼが釣れるのだが、今シーズンはなぜか不調。
自衛隊の航空基地横のワンドも例年釣れまくる釣り場なのだが、今シーズンは模様がよくないようで船長は狙いもしない。
左舷のミヨシ寄りに釣り座を構えた竿富(さおとみ)師匠は、特殊な2本バリ仕掛けで一荷釣りの連続技を見せた。当然のこと、オケの中はハゼだらけになってしまった。
釣ったハゼを入れるオケには、ハゼの体が水で隠れるか隠れないかの程度に水を入れるとよい。オケいっぱいに水を入れると酸欠でハゼは死んでしまうからだ。
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