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本誌編集長◎沖藤 武彦
掲載号: 2010年9月1日号
そしてモロコが上がる
最初の突っ込みをかわして巻き上げると軽くなり、道糸が斜めになる。意外なほどあっさりと上がってきた
翌21日も続けて乗ったのは坂東さんのほか前出の北田さんと大島さん。ほか2名に私を加えた6名が竿を出す。
「見てよ、この色、菜っ葉みたいでしょ。この潮がくるとモロコが釣れるんだよ」
沖に船を出してすぐに船長が言う。確かに今日は西からゴミがよく漂ってくるとは思っていたけど、潮色がまるで違う。過去、敬昇丸では一日に3本のモロコが上がったことがあるそうだが、その日はまさにこの菜っ葉色の潮がさらに白っぽく濁った日だったそうだ。
サバも簡単に釣れた。潮も2ノットを下回り減速傾向。すべてがいい方向だ。
7時にモロコ狙いの1投目。ゆっくりと船が西に流れ、ポイントの端に到達したのか、船長が「上げて」と合図を出す。そのとき、昨日のように右胴の間の北田さんの竿が突っ込んだ。
一瞬のされそうになるものの腕力で竿を起こし一気に巻き上げる北田さん。若き日単身メキシコにわたり身を立てた男(前日一緒に飲んだもので)の底力の前に、驚くほど魚はあっさり上がってくる。サメか?
「いや、モロコだよ!」
船長だけが確信している。そして北田さんが巻き上げ切ってハリスをつかんだとき、我われが覗き込む船底からヌッと大きな口が現れた。
「言ったでしょモロコって!」
ギャフを打ち込む船長。
後検量23.5キロ。
モロコが上がった興奮の前には、2本目のモロコでも釣れないかぎり、たとえ惜しいバラシがあろうとも、強烈なアタリでスッポ抜けようとも、その後の展開はそれほど意味をなさない。ただ、2日間サバを泳がせ続けて何も起こらなかった坂東さんは無念そうだった。
「今日ね、30.6キロが上がったよ!」
船長から電話があったのは4日後。24日には11キロ、他船でも20キロ級が釣れている。
今年の南伊豆は、夢の魚に手が届きそうな気配である。
[敬昇丸]肥田 能研船長
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