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本誌編集長/沖藤武彦
掲載号: 2012年9月15日号
いきなり浮いてきました
ライトケンサキの好調をうけて、金沢市金石港の海龍丸は連日予約で満船だ。私たちが訪れた8月17日も早い段階で満員となったそうだ。
船上を見渡すと、12名のお客さんのうち、ほとんどの人がベイトを軸にスピニングを併用、中オモリの餌木仕掛けで始めて、イカが浮いてきたら一つスッテと考えているようであった。
砂山裕船長が見定めてパラアンカーを入れたポイントは30分ほど走った55メートルダチ。周囲に船はなく、日が沈むと遠くに漁り火が見える。
釣り好きが高じて遊漁船を始めた砂山船長は研究熱心で、他の船が狙わない場所や釣り方にも積極的。それゆえ、当地でいち早くライトケンサキスタイルを導入し大ブレイクさせた。
その仕掛け人が、みなさんご存じのイカ先生.富所潤さん。この日は左大ドモで撮影と解説を受け持っていただいた。
イカ先生には内山がマンマークで取材。私は右トモで一つスッテを楽しむ。
「イカが浮くまでは、中オモリの餌木がいいですよ」
隣の釣友.Z山さんが55メートルのボトム付近で2杯、3杯とケンサキイカを掛ける。
船中でもブシュ、ブシュ、と上がり始めた。みなさんオモリ15号、餌木は2.5号だ。
やはりイカが浮くまで、一つスッテは釣れないのかな……。
迷い始めたとき、20号のナマリヅノの沈下が止まった。
反射的に合わせると、乗った。ドワン、ドワンと、軟らかいロッドが弧を描き脈動する。
きたぜ、北陸!
1杯目を釣り、実感する。しかもナマリヅノが止められたのは海面下18メートル。まだ7時過ぎ、西の空がわずかに明るいのに、イカが浮いてきたのか?
「10メートル、10メートル!」
横でZ山さんが吠える。
「うひょー! 8メートル!」
今度はデカイ!
ちょっと待て、いきなり入れ乗りで、いいのか!?
「ウチヤマさーん、3杯掛けでーす。ウチヤマさーん!」
背後でイカ先生の声。振り向くと、内山が一つテンヤロッドをブン曲げている。
一つテンヤを愛してやまない内山にしてみれば、フォールで止められたり、道糸が震えたりする変化に合わせるこの釣りは得意ジャンル。ひとたび釣り始めたら止まらない。
「マルイカ釣りと、全然違うぅ」
「おもしれー!」
「ウチヤマさーん、3杯でーす」
「8メートルゥ!」
我われ4人の語彙はこのほか、
「たまんねー」とか「でかい」とか「クーラーに入らない」ぐらい。興奮してイヌ並み、いや、それ以下の会話になってきた。
私は終始一つスッテで釣った。空振りで回収することがない入れ乗りの展開に大型を狙う。
方法は単純、シルエットの大きなツノを試したのだ。
ナマリヅノなら重さ20号、餌木ならサイズ2.5号と3.5号。色いろ試していく中で、餌木には胴長30センチ近い良型がよく乗る傾向が見えてきた。
とくに気に入ったのがスパ釣&ティップランで愛用しているディープタイプの3.5号。フォールの途中でフッと止められ、大型が乗ってくる。
ううむ、面白すぎるぞ!
背後では、イカ先生が少年のような笑顔で120杯を釣った。
「入れときますよ〜」
船長がザルに山盛りになったケンサキを何回も持ってくる。
「はあはあ……65杯でした!」
内山は私と同じく一つスッテで大型を狙うべく、重めのナマリヅノで底付近を重点的に狙い、やはり良型をそろえた。
お客さんの多くは中オモリ式の餌木でクーラー満タン。積み下ろしは椎間板ヘルニア注意だ。
そして午前0時に港に戻ると、深夜便のお客さんが待っている。
何なのだ、この釣れっぷり、この面白さは……何でもありじゃないか!
[海龍丸]砂山 裕船長
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