私が釣り上げたあとくらいから船中あちこちでアジが釣れ上がり始めた。しかもほとんどが35センチ以上の良型だからスリルも満点だ。
　私が同級を1尾追釣したところで船長の息子さんが、
　「釣れちゃいました！」と30センチのクロダイを差し出す。
　おやっ、アジと一緒にクロダイも回ってきたのかな？
　すると私の竿先にクックッと魚信が伝わった。しばらく待ったあと、ググッと竿先が引き込まれたところで合わせると、これまでにない重量感が伝わってきた。
　リールを巻くも魚は突っ込み、スプールから道糸が引きずり出される。
　「これは間違いなくクロダイだ！」私はそうつぶやきながら、慎重にヤリトリを行う。
　ところが糸を出したり巻いたりを何度か繰り返した末、ようやく海面に浮かせたのは40センチ級のアジだった。
　このサイズともなれば、デカいというよりも太いと言ったほうがしっくりくる。もちろん太いだけではなく体高もあるし、なんと言っても美味で知られる金谷のブランドアジである。本命クロダイではなかったけれど、うれしさは隠し切れない。
　すると船長のお孫さんである高浜斗亜くん（中学1年生）が左ミヨシでファイトし始めた。上がってきたのは45センチ。1.5キロの立派なクロダイである。
　彼の写真を撮っていると、
　「鈴木さんの竿もアタっているので巻いておきますよ」と吉永くん。上がってきたのはなんと35センチのクロダイだった。
　待ちに待った本命を手にできたのはうれしかったが、自分で巻き上げることができず、複雑な気分でもあった。
　「左のトモでもデカいのが食ったぞ〜！」の声で駆け寄ると、田尾さんが本日最大の50センチのクロダイを取り込んでいた。
　このサイズになると顔つきも精悍で、風格さえも漂う。
　ちょうど時合だったようで、釣友の大塚くんも、
　「やっときました〜」と45センチのクロダイを釣り上げた。
　いよいよこれからと思ったが9時には潮が完全に止まり、魚が一切口を使わなくなった。悪いことに穏やかだった海に南の強風が吹き始めて大荒れとなり、10時前に早揚がりとなった。
　釣果は50センチを筆頭にクロダイが船中5枚。ほか36〜40 センチのアジが1人1〜5尾といったところ。
　船長によればクロダイは今後6月一杯がシーズンで、いいときはトップが2ケタ釣果を出すという。

［太海丸］高濱 清船長