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本誌APC/鈴木良和
掲載号: 2010年7月1日号
置き竿に隠された工夫
6月に入り、ワラサも上がり始めたようだ。この調子ならヒラマサも時間の問題?
大ダイ獲得のチャンスは今。アナタも外房へ急げ!
沈黙状態の中、降り続く雨が集中力を奪っていく。
こんなときは気分転換が大切だ。両サイドの人にちょっと質問してみる。
「どうしてカモシ釣りが好きなのですか?」
「ヒラマサが釣りたくて始めました。今の時期はマダイでトレーニングですかね」と答えてくれたのは山下さん。
「自分は横着者だから、のんびりした釣りが好きなんです」とは小泉さん。
そして2人は、「ヤリトリの面白さは経験した者にしか分からない」と口をそろえた。
そんな話で和んでいたところ、置き竿にしていた小泉さんの竿が突然ガッガ〜ンとたたかれた。
慌ててタックルを持つや、大きく合わせを入れてバトルの開始だ。激しい突っ込みにギュン、ギューンと道糸が音を立てて引きずり出される。ポンピングの構えで竿を立てれば、見事な弧が描かれグラス製の竿先は海面に没する。
その抵抗をいなしながら徐々に魚を浮かしてくる。サクラ色の魚影が船下に見えてきたところで船長がタモを入れ、一気にすくい取ったのは2.5キロのきれいなメスのマダイであった。「どのようにして置き竿にしていたのですか?」
小泉さんに伺うと、「今日は波が高く私の席はミヨシで揺れが大きいので、ミンチを硬めに溶き、カモシ袋の口の金具を狭く変形させてミンチの出を抑えていました」とのこと。
なるほど。どの釣りも同じだが、渋いときこそ状況に適した工夫が物をいう。そう、小泉さんは決して横着者ではないのだ。
その後は移動を繰り返し、浅いポイントも探ってみたが釣果には恵まれなかった。
結局だれの竿も曲がることなく時間が過ぎ、沖揚がりの30分前になると「今日はお仕舞い」と、竿を仕舞う人も出始めた。そこへ、「食ったぞぉー」と声が上がった。
最後の最後に掛けたのは原田さん。巻いては出され、出されては巻いての大バトル。
皆の熱い視線を一身に浴びながら釣り上げたのは3.5キロのオスのマダイであった。
結局この日はマダイは3枚と寂しい結果に終わったが、次の日から良型マダイを交じえて釣果が好転。ヒラマサが船中5本上がった日もあったらしいから、今後も十分期待できる。
私は見事に不運な日に当たってしまったということか……。いや、運を呼び寄せるかどうかは自分次第。準備と工夫は怠りなく挑みたい相手だ。
[盛幸丸]本庄信行船長
Page1 外道すら食わない
Page2置き竿に隠された工夫
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